☆ミャンマーで考えたこと(歯科とは全く関係ない話題です)
Not looking for Miss Yangon,but......
私 院長原田は仏像を見るのが好きである。
特定の宗教団体に属しているわけでもないし、
仏像や仏教建築に造詣が深いというわけでもない、
結婚式は神前で挙げ、親類の葬式は仏式で行なう、
どこにでもいる日本人なのだが、
ただ純粋に仏像をながめていると心が和むというか
ひきこまれるのである。
例えばアジアでもタイのように仏教建築の多い国は好きである。
そんな私は最近 仏教国ミャンマーに行ってきた。
ミャンマーのガイドブックを見ると、人々は仏教に対する
信仰心が厚く、仏教では人前で怒りの感情を見せるのは
みっともないこととされ、隣のタイに比べると旅行者が犯罪に
巻き込まれる件数は10分の1だ などと書いてある。
しかし実際に行ってみると少しニュアンスの違うものだった。
確かにどこの町、どんな小さな村に行っても遠くから
目立つところにパゴダ(仏塔)があり、多勢の人が
お参りし熱心に祈っている。
しかしそれには何か理由があるのではないかと思った。
この国については、アウンサン・スーチーさんの
こと以外では日本ではあまり報道されていないが、とにかく貧しい。
アジアではバングラデッシュ、カンボジア、ラオスと並ぶ最貧国である。
政情不安定な軍事政権の国にはアジアでも
ベトナムや中国と違って外国からの投資も
あまり入って来ず、建築途中で中止されたデパートや
マンションが散見された。
政府や軍隊にコネがある人は豊かなようで
平均月収が5000円くらいの国で、日本円で30万円もする
携帯電話を持っていたりするが、
一般庶民は携帯電話どころか普通の電話も持っていない家のほうが
圧倒的に多く(1000世帯中 4世帯にしか電話がない)、
例えば私が滞在したホテルでも
従業員に連絡をとるには近くの電話のある家に電話して
そこから使いの人が直接伝言に行くそうである。
そもそもタクシーに乗るのに事前に料金を交渉しなければいけない
などというのは、まともな国ではない。
そしてどこへ行っても賄賂、袖の下が横行し、企業のトップには
軍人・政治家の親族か、麻薬取引で財をなした人物が居座る。
ガイドの案内で地方の農村の家を案内してもらったが、
人々は家畜同然の暮らしをしていると言ってもいいくらいだ。
またこの国は軍事政権で秘密警察が人々の行動を
監視しており、反政府的な言動をすればマラリアが蔓延する
劣悪な環境の刑務所に入れられ拷問を受け死亡することも
珍しくないようである。
このような状況でも暴動が起きないのは、
国民の仏教への信仰心が厚く争いを好まないからと
私は考えたが、必ずしもそれだけではなく
軍事政権が大学を地方に分散させ学生運動が起きにくいように
しているからだそうである。
学生たちも卒業しても仕事がないため独学で英語、日本語、フランス語、
ドイツ語、イタリア語、スペイン語などを勉強し
ガイドになったりする。
彼らは至ってまじめで一部の国のように悪徳ガイドになることはないようだ。
ミャンマー人は勤勉な国民性らしく読書が好きで
町中には露店の本屋なども見かけた。
この勤勉な国民性から欧米の企業も進出の機会を狙っているようだ。
しかし町には物乞いやホームレスがあふれ、
町の活気といったら同じアジアでもタイ、
シンガポール、香港などとは比べ物にならない。
旅行者が犯罪に巻き込まれる件数がタイの10分の1と
書いたが、そもそもミャンマーには日本から直行便が
飛んでいないこともあり、ミャンマーへの日本からの
旅行者はタイ への旅行者の10分の1以下である。
日本人よりもむしろヨ−ロッパからの旅行者が多い。
アメリカ人はあまり来ないらしい。
ミャンマーで外貨を落とすとそれは軍事政権が
武器を買うために使うから彼らは来ないのだ、
というのがガイドの説明だった。
実は私自身犯罪に巻き込まれた(と言うほど大げさなものではないが……)。
首都ヤンゴンではベスト5に入る高級ホテルに滞在していた
のだが(といっても日本のビジネスホテル並みの料金で
泊まれる)、部屋に置いておいたスーツケースの
ミッキーマウスのネームタッグからミッキーの部分だけが
えぐり取られていたのだ。
安ホテルではない、高級ホテルの客室から日本でだったら
1000円かそこらの品物がなくなるなんて……。
またこの5月にはヤンゴンのインヤレークホテルという
高級ホテルで日本人商社マンが客室でホテル従業員に
殺されるというとんでもない事件が起きた。
つまりこの国はフィリピン並に治安が悪い国なのだ。
ただその背景には失業率28%という現実、そして貧困がある。
インフラはひどい。
しょっちゅう停電が起こる。
道はアスファルトはひいてあるもののデコボコで
長時間クルマに乗っているととにかく疲れる。
幸い水が豊富なせいかアフリカのように飢餓が原因で
亡くなる人は少ないようだが、例えば
医療器具や薬は極端に不足しているようである。
首都ヤンゴンの空港の設備といったらひどいもので
日本の地方のバスターミナルのほうがよほどきれいである。
いくら仏教に対する信仰心が強くたってあまりに貧しければ人の心は荒む。
多くの人が平気で道にゴミを捨て、
中には両脇ゴミの中に道があるようなところもある。
彼らが熱心に祈っていたのは、このどうにもならない
現実から逃れるには祈るしかないからと私は解釈した。
ミャンマー第2の都市マンダレーには有名な僧院があり
外国人観光客が大勢来ていたが、ここには日本でいえば
小学生くらいの子供が出家してお寺の中に住んでいる。
しかし彼らの中には家が貧しくて口減らしのために
お寺に預けられた子供も多勢いるそうである。
その子坊主たちの中には一歩 お寺を離れると
えんじ色の袈裟を着たまま観光客にチップをねだってくる者もいる。
外国人旅行者が泊まる高級ホテルのレストランではあり余る
食べ物の多くが残飯として捨てられているのに、
一歩外に出れば毎日の食べ物にも欠く大勢の人、
そしてちょっと火事や地震が来れば簡単にこわれてしまいそうな貧相な建物。
ミャンマー人は日本人と顔かたちが似た人が多い。
しかしながらたまたま生まれた国がミャンマーか日本か
だけでなぜこうも境遇が違ってしまったのか
今の自分には何ができるのかと
考えずにはいられない旅行であった。
(2002年冬)
