☆米国訪問で実感したアメリカの時代の終わり


この春 矯正歯科のシンポジウム参加のためホノルルを訪問した。

ホノルルと言えば一般の日本人には観光地というイメージが強いが、

私は単なるアメリカの都市のひとつと考えている。

今まで3回ホノルルに行ったが、3回とも歯科関係の用事での

訪問であり、観光目的で行ったことはない。

実際今回の会議でも、現地で会った知り合いの日本人歯科医師に、

「ハワイに来るのに水着を持ってきていないのは原田だけだ」と言われた。


さて会議を終えてホテルに帰るある日の午後、ものまねショーのチケットを

とるため、ハワイでは有名なアウトリガーワイキキオンザビーチ・ホテルの

プレイガイドに行ったところ、応対した日本人スタッフから、「今から2時間

ほど、アメリカでは余暇の過ごしかたとして定着しているタイムシェアに

ついての説明を聞いてくれれば50ドルの金券をさしあげる、ものまねショー

の入場料は50ドルなので実質無料でショーを見られることになる」との

お誘い。うさん臭いとは思ったがここは高級ホテル。何かのセールスを

断った途端に こわいお兄さんが出てきて、ピストルを突き付けられることも

なかろうと考え説明を聞きに行くことにした。


説明会場は歩いて5分ほどの系列ホテル内のオフィス。

そこで別の 現地在住という日本人中年女性が待ち構えていた。

早速説明が始まるのかと思ったら、どうやらこのセールスにはマニュアルで

定められた手順があるらしく、まずワイキキビーチが見渡せる広々とした

窓のところに通され、「おいしいコーヒーとクッキーはいかがですか?」

ときた。おいしいコーヒーと言ったくせに、実際にはよく会社に置いてある

ボタンを押すとジューっと出てくるあの自動コーヒーサーバーである。


最初のセールストークは相手の情に訴える作戦らしく「原田様、実は私は

米国人と結婚して20年以上になるのですが、今 心残りなのは 日本にいた

私の両親が元気なうちにここに呼んで毎日この素晴らしい景色を見ながら

余生を送らせてあげたかったことです」。


次に大きなスクリーンの前に通される。

「原田様、今回お泊まりのホテルは1泊おいくらくらいですか?」

「えー、確か200ドルくらいでしたかねー(実際は違う)」

「年に何回くらい旅行されますか?」

「3回くらいでしょうか」

「1回のご旅行で5泊くらいされるでしょうから年3回なら15泊ですね。

ということは1年間に使うホテル代は200ドル×15泊=3000ドルになりますよね。

ところで原田様、今回200ドルで泊まられたホテルは20年前の宿泊料は

いくらくらいだったと思いますか?」

「………………。」

「20年前は今よりずっと物価が安かったので、多分100ドル以下で

泊まれたでしょう。ですから今回泊まられたホテルも10年後には250ドルとか

270ドルしているかもしれませんね。

では原田様がこれから30年間で使うホテル代は、毎年のインフレ率が仮に

5%としていくらくらいになるでしょう?」


ここで大スクリーンに、年間3000ドル×インフレ率×30年= 数万ドル、

すなわち数千万円 という計算式がボンと出る。

(日本ではすでにインフレの時代は終わり、デフレの時代に入っているのに…

この人 本当に5%のインフレがこれから毎年起こると思っているのかしら 

と思ったが黙って説明を聞く)



さらにたたみかけるように今度は画面に超豪華な2ベッドルームのスイートルーム

のCG画像が出てくる。

「原田様 今日お泊まりのホテルのお部屋はどれくらいの大きさですか?」

「部屋ひとつにベッドとテーブル、イスがあるごく普通のシングルルーム

ですが……。」

「原田様 もし私どものメンバーになれば、年間同じ出費でこれだけ

素晴らしいお部屋に泊まることができます。」


さらに続けて別室に通され、そのタイムシェアなるものの具体的なセールスが

始まる。つまりタイムシェアとは一度約800万円の会費を払い会員になると、

世界中の豪華施設を家族や友人も含めて一定限度で利用することができる

リゾート会員権のような仕組みらしい。


そしてセールスウーマンは、生涯ホテル代として使うであろう数千万円に

比べたら、800万円は割安であることをしきりに強調する。

そしてこちらが乗り気でないと見るや、ローンも利用できるとか、

今すぐ契約すれば特別にポイントをさしあげるとか、この会員権はアメリカでは

歴史のあるものであり、売ることもでき、数に限りがあるので、募集が終了したら

必ず値上がりする、また本人が亡くなっても子供に名義変更できる などと

 色々とつっこんでくる。


これってバブルのときの日本のゴルフ会員権のセールスと同じじゃないかと、

30代後半以上の日本人なら普通は考えるのではないだろうか。


さて延々2時間以上セールスにつきあわされた後、ホテルのロビーまで

送ってもらう。ここで例の50ドルの金券をもらえるのかと思いきや、

セールスレディ 金券はさしあげられないと言う。

えーーっ、何で!?と思ったが最初に署名させられたセールス参加申し込み書の

片すみに非常に小さい字で、50ドルの金券をもらうには説明会に夫婦での参加が

必要と書いてある。


そんなことは聞いていない!とクレームをつけると、件のセールスレディ

「ではマネージャーに聞いて参ります」としばらく席をはずし、

やがて戻ってくる。

「やはり、規則なので50ドルの金券をお渡しすることはできません。」

納得できないので今度はかなり強く抗議すると、セールスレディ再度席をはずす。


今度はマネージャーらしき長身の白人男性を連れて戻ってくる。

そして早口の英語で「申し訳ない。最初に応対したのは新入社員でシステムの

ことをよく理解しておらず、お客様に間違った説明をしてしまいました。

約束通り金券はさしあげます。」という内容のことをまくしたてた。


さて金券をもらうため再度事務所に戻る道すがら、件の日本人セールスレディ

今度は私原田がいる前で携帯電話で自社の社員に電話をかけ、

こちらに聞こえよがしに「こんなことでは困ります! お客様だけでなく

関係したすべての社員に迷惑をかけているのですよ!! 今後このような

ことがないように、これからは日本人の新入社員は日本人のスタッフが教育する

よう徹底してください!」


いかにもくさい芝居をしていると思ったが、とにかく50ドルの金券をゲットし

やれやれとの思い免税店へショッピングに行く。

免税店では、はずれクジなしの福引のようなものをやっており、よせばいいのに

参加する。


福引は残念ながら末等だったが、なぜか福引会場と景品受け渡し場所が

別になっている。景品の絵葉書を受け取りに行くと、そこにいた割と

日本語を流暢に話す 多分日系米国人「お客様、明日2時間ほどお時間を

いただいてこの近くの私どものオフィスで、ヒルトンホテルの

ルーム賃貸システムのお話を聞いていただければ、この免税店で使える

100ドルの金券をさしあげます。」


これには さすがにあきれた。

リゾート地をメインに展開しているアウトリガーホテルだけでなく、米国を

代表する企業であるヒルトンホテルまでがこんなセールスをやっているとは…。


20世紀後半はまさにアメリカの時代だったと思う。

だがその一方で、アメリカはイラク戦争をはじめ戦費を多量に使っており今後は

国力が弱くなるだろうなどと、今後はアメリカの衰退を指摘する声が

最近よく聞かれる。

先に述べたように私がホノルルを訪問するのは今回が3度目であるが、今回の

ような経験は初めてである。

今回の経験から米国の不動産バブルの崩壊、そしてさらなる不況の到来は

そう遠くないと見た。

  (2003年春)           

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